働き方改革やコンプライアンスに対する意識変化など、企業には以前にも増して厳格な労働時間の管理が求められるようになりました。
労働時間に対する定義をあいまいなままにしておくと思わぬ労使トラブルに発展しかねないため、法にのっとった正しい定義と管理方法を理解しておくことが大切です。この記事では、労働時間の定義や、所定・法定労働時間の違い、適切な管理方法について解説します。
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労働時間とは?労働基準法と判例の定義
労働時間とは、業務開始から終了までの時間から休憩時間を除いた時間をいい、労働基準法の規制が及ぶ時間です。端的に言うと「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。
この定義に関しては、労働基準法に明確に規定されているわけではありませんが、下記判例によって一般的な定義とされています。
「労働基準法上の労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。
三菱重工業長崎造船所事件(平成12年3月12日最高裁判決)|全基連
勤務時間、出勤時間、拘束時間とどう違う?
労働時間に似た言葉として「勤務時間」「出勤時間」「拘束時間」がありますが、それぞれ以下のような違いがあります。
勤務時間
勤務時間は、いわゆる「定時」のことで、それぞれの会社の就業規則に規定された始業時間から終業時間までの時間(休憩時間含む)です。勤務時間は「就労時間」ともいわれています。
勤務時間には、定時以外の早出の出勤時間や残業時間は含めません。
出勤時間
出勤時間は、勤務時間と同じ意味で使われる場合もありますが、労働者が事業場に到着する時間という意味で使われることのほうが多い言葉です。また、事業場に到着する意味で使用される場合でも、就業規則上の「始業時間」とは意味が異なります。
拘束時間
拘束時間は、業務開始から終了まで事業場に滞在する時間であり、休憩時間や残業時間を含めます。ただし、業務を終えて喫煙したり従業員同士で歓談したりといった、単に事業場に留まっている時間は除きます。
所定労働時間と法定労働時間、実労働時間の違いは?
労働時間には、「所定労働時間」と「法定労働時間」の2つがあります。所定労働時間とは、事業場が就業規則や個別の雇用契約書の中で定める労働時間であり、原則的に法定労働時間以内に収まるように設定されています。
たとえば、「始業時間9時、休憩12時~13時、終業時刻17時30分」と定めている企業の所定労働時間は7時間30分になります。
一方、法定労働時間とは、労働基準法が定める労働時間のことで、「1日8時間・1週40時間」まで(例外については後述)と定められている時間です。
また、実労働時間は、事業場において実際に業務を開始してから終えるまでの時間のうち、休憩時間を除いた時間を指します。つまり、36協定の判定や給与計算のもとになる時間ということになります。
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労働時間に該当するもの・該当しないもの
それぞれ労働者の個別の業務以外でも、使用者の指揮命令下に置かれていると判断されれば労働時間に該当します。また、具体的な指示がなくても、黙示の指示が認められる場合は労働時間に該当します。
労働時間に該当する事例 | 労働時間に該当しない事例 |
・業務に必要な着替えなどの準備行為 ・手待ち時間 ・参加が義務付けられている朝礼や研修 ・緊急対応が必要な仮眠時間 ・具体的任務を帯びた移動時間 ・特殊健康診断 | ・業務とは関係ない身だしなみを整える行為 ・自らすすんでやる掃除 ・参加が任意の朝礼や研修 ・出張時の単なる移動時間 ・一般健康診断 |
労働時間と休憩時間、残業時間の関係
「労働時間」「休憩時間」「残業時間」は、それぞれ密接な関係しており、たとえば休憩時間をどれだけ与える必要があるのかは労働時間によって変わります。また、残業時間に関しては、法定労働時間内か法定労働時間外かによって、割増賃金の有無が変わります。
休憩時間は労働時間によって決まる
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。また、休憩時間には「途中に」「一斉に」「自由に」という三原則があります。
残業時間とは?法定内残業と法定外残業の違い
所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合(たとえば所定労働時間7時間)、同じ残業であっても割増賃金の有無が異なるケースが出てきます。
所定労働時間を超えたものの、法定労働時間以内におさまったケース(法定内残業)と、法定労働時間を超えたケース(法定外残業)では、労働者に支払われる賃金が変わってきます。
所定労働時間が7時間で残業時間が1時間以内、つまり実労働時間が8時間以内だった場合は「法定内時間外労働」として、割増無しの1時間相当分の賃金を支払えば問題ありません。
一方で、残業時間が1時間を超え実労働時間が8時間を超えた場合、超過した時間は「法定外時間外労働」となり、割増賃金(25%以上)を上乗せして賃金を支払う必要があります。
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法定労働時間の制限と例外について
「1日8時間・1週40時間」という法定労働時間を超える労働は原則違法ですが、いくつか例外が設けられています。
法定労働時間を超えて労働させるには36協定が必要
法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える労働をさせる場合には、使用者と労働者との間で時間外労働についての労使協定(いわゆる「36協定」)を締結する必要があります。
36協定を締結することで、月45時間・年360時間までの法定時間外労働が可能になります。36協定に特別条項を設けることで上限を超える時間外労働が可能となりますが、認められる要件はかなり限定的で、以下の上限も設けられています。
- 年720時間まで
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」の全てが、80時間以内
- ⽉45時間を超える時間外労働ができるのは、年6回まで
法定労働時間が週44時間となる特例措置対象事業場とは
法定労働時間は週40時間が原則ですが、従業員数が常時10人未満であり以下に挙げる特例措置対象事業場に該当する場合は、1週間における所定労働時間を44時間まで設定可能です。
商業 | 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業 |
映画・演劇業 | 映画の映写、演劇、その他興業の事業 |
保健衛生業 | 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業 |
接客娯楽業 | 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業 |
管理監督者には残業がない?
労働基準法第41条に定められた管理監督者に該当する労働者には、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。
よって、管理監督者が法定労働時間を超えて労働した場合でも、割増賃金(残業代)を支払う必要はありません。ただし、深夜労働については適用されるため深夜割増賃金は必要です。
変形労働時間制
変形労働時間制を導入すると、特定の期間に限り「1日8時間・週40時間」を超えての労働が可能になります。変形労働時間制とは、月単位や年単位の一定の期間の中で、総枠が決められた労働時間をやりくりする制度です。
変形労働時間制には、「1ヶ月単位」「1年単位」「フレックスタイム制」「1週間単位」があり、繁閑の差による労働コストの削減に有効です。
みなし労働時間制
実労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間分労働したものとみなす制度で、原則的には時間外労働が発生しません。
みなし労働時間制は、「事業場外労働のみなし労働時間制」と「裁量労働制」に分かれ、さらに裁量労働制には、「専門業務型」と「企画業務型」があります。
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労働時間の管理方法4パターン
労働時間の管理方法にはいくつかありますが、会社規模、従業員数、勤務形態などによって最適な方法は異なります。
出勤簿への手書き
出勤簿は、「労働者名簿」「賃金台帳」と並んで、事業場で必ず備えなければならない法定三帳簿の1つであり、出勤簿への手書きは最も原始的な労働時間管理方法と言えます。
メリット | デメリット |
・従業員自ら記入する場合は、比較的正確な労働時間になる ・低コスト | ・必要な情報をピンポイントで探し出すのに非常に手間がかかる ・物理的なスペースを取られる ・集計作業の負担が大きく、ミスも起きやすい ・紛失や廃棄リスクがある |
タイムカード
タイムカードによる勤怠管理は以前は一般的でしたが、現在では大きく減少傾向にあります。
メリット | デメリット |
・従業員の出退勤管理作業としては非常に楽 ・手書きによる記入ミスが無い | ・不正打刻や打刻漏れが起きやすい ・集計作業は結局手作業になる |
エクセル
エクセルによる管理方法は、単なる表に手入力する方式から、関数を組み込んで自動計算できる方式まで幅広く活用されています。
メリット | デメリット |
・PCに慣れている従業員が多い場合は、労働時間の管理が楽になる | ・完全に法にのっとった仕様にするには、法律知識とエクセルスキルの両方が必要となる ・データ削除や改ざんのリスクがある |
勤怠管理システム
複雑な労働時間の管理だけではなく、さまざまな労務管理項目を一元管理できる勤怠管理システムを導入する企業が増えています。
メリット | デメリット |
・給与ソフトなど、他の情報システムやデバイスと連携可能 ・変形労働時間制や法改正等にもフレキシブルに対応できる ・打刻漏れやデータ改ざんの心配がなく、高レベルの労務管理が可能 | ・初期費用と月額料金などのランニングコストがかかる |
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労働時間の管理は勤怠管理システムが最適
働き方改革によって、労働時間の管理はより厳格さを求められるようになりました。勤怠管理システムを導入することで、手書きやエクセルで起こりがちな計算ミスや不正打刻を防ぎながら、効率的な労働時間管理が可能です。
人事労務管理担当者の負担も軽減され、無駄な残業時間の把握も可能になり、生産性も向上することから、初期投資コストの回収も可能です。
コンプライアンスに沿った労働時間管理のために、自社に合った勤怠管理システム導入をおすすめします。
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