労働時間に関するルールは、人的リソースのマネジメントに直接影響を与える重要な要素です。特に「所定労働時間」と「法定労働時間」の違いは、しばしば混同されがちですが、これらを正しく理解することが、労働者としての権利を保護し、健全な労働環境を確保するためには不可欠です。
両者は一言でいうと、所定労働時間は企業が独自に、法定労働時間は国が法律で、それぞれ定めた労働時間という意味になります。では、この違いが実際の労務管理において、具体的にどのように反映されるのでしょうか?
本記事では、所定労働時間と法定労働時間の違いを明らかにし、それぞれの運用面でのポイントや注意点を、わかりやすく解説します。
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所定労働時間と法定労働時間の違い
所定労働時間は、企業が就業規則等で独自に定める通常の労働時間です。具体的には、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた時間になります。
一方で法定労働時間は、国が労働基準法において定めた1日または週あたりの労働時間の上限を指します。原則的には1日8時間・週40時間(特定業種の事業場は44時間)とされており、これを超える労働には36協定の締結・届出と割増賃金の支払が必要です。
所定労働時間と法定労働時間の比較表
以下に、所定労働時間と法定労働時間の比較表をまとめました。
項目 | 所定労働時間 | 法定労働時間 |
---|---|---|
定義 | 企業が定める労働者の通常の労働時間 | 国が定める1日及び1週間あたりの最大労働時間 |
時間設定 | 企業が就業規則等により自由に設定(例: 1日7.5時間×5日等) | 労働基準法により最大1日8時間、週40時間まで |
超過時の取扱い | 超過分は企業の規定に従い、法定労働時間に達するまでは割増賃金が支払われない場合が多い | 法定労働時間を超えた労働には、割増率25%以上の時間外割増賃金の支払いが必要 |
目的 | 労働者のライフスタイルや業務効率を考慮して設定 | 労働者の健康と公正な労働条件を保障するために設定 |
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所定労働時間とは
所定労働時間とは、企業が独自に定める労働時間であり、通常は労働契約または就業規則等に基づいて設定されます。各企業が労働環境や業種、業務の需要に応じて設定し、国や地域の労働基準法に準拠しています。
所定労働時間と休憩時間との関係
休憩時間は所定労働時間に応じて労働基準法で義務付けられており、これは労働者の健康保持と労働効率の向上を目的としています。
労働基準法では、6時間を超える労働には少なくとも45分、8時間を超える労働には1時間以上の休憩が必要です。休憩時間は所定労働時間の一部ではなく、労働時間から除外されるため、勤務時間中の実労働時間には含まれません。
法定労働時間とは
法定労働時間は労働基準法に基づいて定められた労働者が安全に労働できる最大の労働時間で、原則1日8時間、週40時間とされています。
労働基準法では、労働者の健康保護と公平な労働環境を確保するため、この時間を超える労働は原則として認められず、超える場合は割増賃金の支払いや36協定の締結・届出が必要です。
36協定と労働時間の上限
36協定は、法定労働時間を超える残業や休日労働を可能にする労使間の合意で、正式には「時間外労働及び休日労働に関する労使協定」と呼ばれます。36協定では、時間外労働の対象となる業務や労働時間の上限、休日労働の回数などが明確に定める必要があります。
36協定の締結した場合でも、時間外労働の上限は原則的に月45時間・年360時間(期間が3ヶ月を超える1年単位の変形労働時間制においては月42時間・年320時間)が上限と定められています。
また、原則の上限時間を超えて労働を命ぜざるを得ない特別な事情がある場合には、36協定に特別条項を設けることで更なる時間外労働が可能です。ただし、特別条項を設けた場合でも、以下の上限規制はすべて満たす必要があります。
- 時間外労働の合計が年720時間以内(休日労働は含めず)
- 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計が2ヶ月~6ヶ月平均のいずれも80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6回まで
割増賃金と割増率
割増賃金は、法定労働時間を超える労働、法定休日の労働、深夜労働が発生した場合に支払われる追加の賃金で、時間あたりの基礎賃金に対する割増率に基づいて計算されます。
労働基準法では、時間外労働に対して25%以上、深夜労働(22時から翌5時)に対して25%以上、休日労働に対して35%以上の割増賃金の支払いが義務付けられており、これは労働者の過重労働を抑制し、適切な賃金補償を行うために設定されています。
特例措置対象事業場とは
以下の業種の事業場で、従業員規模10人未満のものは「特例措置対象事業場」と呼ばれ、週の法定労働時間が44時間まで認められています。なお、1日の法定労働時間が8時間なのは変わりません。
- 商業:卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業
- 映画・演劇業:映画の映写、演劇、その他興業の事業
- 保健衛生業:病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業
- 接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業
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法定労働時間が例外的に取り扱われるケース
法定労働時間は特定の制度によって例外的な取り扱いをする場合があります。以下に、代表的なものをご紹介します。
変形労働時間制
変形労働時間制では、一定期間内(例えば1ヶ月や1年)で平均して法定労働時間を守ることを条件に、個々の日や週の労働時間を柔軟に設定できます。
労働基準法では、この期間内(「変形期間」と呼びます)で週平均労働時間が原則40時間を超えない範囲であれば、労働時間の変動が認められます。
変形労働時間制は、月内や季節による業務量の変動が大きい業種で特に有効です。例えば、建設業では夏には日照時間が長く作業が可能なため、1日の労働時間を長く設定し、冬には短くすることで年間を通じて均一な労働時間を確保しています。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、労働者が始業及び終業の時間を自由に設定することで、労働者のワークライフバランスの充実や仕事の効率化を狙った制度です。
フレックスタイム制において、必ず出勤すべき時間帯をコアタイム、労働者が自由に出退勤を決められる時間帯をフレキシブルタイムと呼びます。
フレックスタイム制では、基本的に清算期間と呼ばれる対象期間のトータルの労働時間で時間外労働を管理するため、日単位や週単位では時間外労働は発生しません。
事業場外みなし労働時間制
事業場外みなし労働時間制は、主に外出が多い営業職や技術職で用いられ、労働時間の算定が困難な場合に、一定の時間分労働したものとみなして労働時間を管理する制度です。
次にご紹介する裁量労働制とともに「みなし労働時間制」の一つであり、実労働時間に関わらずあらかじめ決められたみなし労働時間で、日々の労働時間を管理します。
基本的には日々の時間外労働は発生しませんが、設定したみなし労働時間がそもそも法定労働時間を超えている場合や、所定休日に労働したことで週の労働時間が40時間を超えた場合などは、割増賃金が必要になります。
裁量労働制
裁量労働制は、みなし労働時間制の一つで、労働者が自らの裁量で仕事の進め方を決定できるため、基本的には時間外労働は発生しません。ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超えていたり、週の合計が法定労働時間を超えたりした場合は、割増賃金の支払が必要です。
なお、裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」があり、それぞれ適用要件や必要な手続きが異なっています。
高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度は、特定の高度な専門職の労働者に対して、法定労働時間の制約を除外し、労働時間ではなく成果で評価する制度です。高度プロフェッショナル制度では、労働時間と賃金を切り離して考えるため、時間外労働は発生しません。
高度プロフェッショナル制度は、労働時間の規制が除外されるため慎重な適用が求められ、一定の年収要件を満たす特定の専門職に限って認められています。
管理監督者
管理監督者は、その地位や職務内容により、「労務管理などについて経営者と一体的な立場にある」と判断される労働者を指します。管理監督者に該当すると、労働基準法の労働時間、休憩及び休日の規定が適用除外となります。
ただし、恣意的に運用されるいわゆる「名ばかり管理職」問題の温床となるため、要件は厳格に判断されることになります。なお、管理監督者であっても、深夜労働や年次有給休暇に関する規定は適用されるため、注意しましょう。
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所定労働時間と法定労働時間についてよくある質問
所定労働時間と法定労働時間について、よく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
- Q拘束時間との違いは?
- Q所定労働時間が法定労働時間を超える場合は?
- Q実労働時間が所定労働時間を下回る場合は?
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