「働き方改革」「働き方の多様化」「労働者の流動化」など、労働環境の改善に向けた課題について、昨今、政府主導のさまざまな取り組みがなされています。
人口減少による深刻な労働力不足の問題や、コロナ禍以降のテレワークの普及もあり、従来の勤務形態そのものを抜本的に見直す機運も高まっています。また、働き方が多様化する時代の要請を受けて、勤務時間にとらわれないさまざまな勤務形態が採用されています。
この記事では、勤務形態にはどのような種類があるのか、種類別の勤怠管理の注意点について解説します。
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勤務形態の種類と勤怠管理の注意点
勤務形態は勤務体系とも呼ばれており、「どの時間帯に働くか」「どういったペースで働くか」「勤務時間の管理をどうするか」などによって、区分されています。
主な勤務形態としては、「固定時間制(通常勤務)」「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「みなし労働時間制」「高度プロフェッショナル制度」「シフト制」「宿直勤務制」「管理監督者」などがあります。
企業にとっては、勤務形態に応じた労働者の勤怠管理が必要になるため、それらの注意点も交えて解説します。
雇用形態は、正社員・パート・アルバイト・派遣社員などのように、雇用契約上の社員の身分であり、雇用契約時の労働者の労働条件や待遇の違いをいいます。

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固定時間制(通常勤務)
固定時間制(通常勤務)とは一般的な勤務形態で、1日8時間・週40時間という法定労働時間の枠で労働する勤務形態です。
所定労働時間が月曜日~金曜日の週5日勤務(土日は休日)で、9時から18時までの計8時間労働(途中の休憩1時間)というのが典型例です。時間外労働に対しては、労働基準法に従って25%以上の割増賃金を支払います。
労働時間が一定で固定されているため、柔軟性に乏しいものの、スケジュールを立てやすく、また企業側の勤怠管理は非常に楽であるのが特徴です。
しかし、職務経験など労働者の業務能力の違いや、業務の閑散期によって、労働者の業務量に差が出るようであれば、変形労働時間制などの導入も視野に入ってきます。
変形労働時間制
変形労働時間制とは、月や年単位で労働時間を調整する労働時間制で、一定の期間の中で総枠が決められた労働時間をやりくりする制度です。
変形労働時間制には、「1ヶ月単位」「1年単位」「フレックスタイム制」「1週間単位」があり、フレックスタイム制も変形労働時間制の一つです。
繁閑の差による労働コストのロスを減らせる一方、制度導入のための手続きや労働時間の管理が煩雑になります。

1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の変形期間を定めてシフトを組み、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えての労働が可能になる制度です。
具体的には、1ヶ月以内の期間を平均し、1週間当たりの労働時間が40時間(あるいは44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定します。特定の週や決まった日に、どうしても業務が集中する事業場などで有効です。
週平均40時間と期間内の総枠に収まっていれば、任意の週・日ごとの労働時間の上限がなく、大胆な労働時間の設定が可能です。一方、導入するには、就業規則の改定もしくは労使協定の締結が必要になり、残業代の算出が煩雑になる点には注意が必要です。

1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月を超え1年以内の対象期間を定めて、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えての労働が可能になる制度です。
ハイシーズン・オフシーズンの差がハッキリしている事業場では、年間の時間外労働を削減できます。
また労働者に対して閑散期の短時間労働や休暇の取得を推進し、リフレッシュしてもらい、会社全体のモチベーションアップが可能です。一方、労使協定の締結が必要であり、勤務カレンダーの作成や残業代の計算など労務管理の負担が増えます。


1週間単位の非定型的変形労働時間制
1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、労使協定によって1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に運営可能な制度です。
曜日によって繁閑の差が激しい事業場などにおいて、1日10時間を上限に所定労働時間の設定ができます。しかし、対象事業場が「常時30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業」に限られており、実際の導入事例は少ないのが現状です。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、法律上、変形労働時間制の一類型として定義されていますが、内容は全く別物です。フレックスタイム制とは、労働時間の設定を労働者に委ねる制度であり、労働者は始業時刻と終業時刻を自由に設定可能です。
労働者にとって柔軟な働き方が可能となり、生産性の向上が見込める一方、コミュニケーションロスや勤怠管理が煩雑になるというデメリットもあります。

清算期間によって2パターン
フレックスタイム制は、清算期間(フレックスタイム制の対象となる期間)によって、「1ヶ月以内のフレックスタイム制」と「1ヶ月を超え3ヶ月以内のフレックスタイム制」の二つに分かれます。
それぞれの制度の違いは、「残業代算出の元となる時間外労働のカウント方法」や「導入に必要な手続き方法」にあります。
コアタイムとフレキシブルタイム
フレックスタイム制において、就業時間のうち、会社が必ず出勤しなければならない時間帯として指定した時間をコアタイムといいます。一方、コアタイム以外の労働者が自由に出退勤を決められる時間帯をフレキシブルタイムといいます。
労働者の利便性と業務への影響のバランスを取りながら、フレキシブルタイム・コアタイムを設定することが重要です。
また、フレックスタイム制において、残業代は清算期間トータルで考えるため、労働者への制度の周知説明を徹底し、誤解を生じさせないことも大切です。


みなし労働時間制
みなし労働時間制は、「事業場外労働のみなし労働時間制」と「裁量労働制」に分かれ、さらに裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」があります。
実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた労働時間分を働いたとみなす制度です。労働時間の管理は楽になる一方で、恣意的に運用されるとサービス残業の温床になるおそれもあるため、注意が必要です。

事業場外労働のみなし労働時間制
事業場外労働みなし労働時間制とは、外まわりの営業職など事業場外で労働する場合に導入される制度です。
所定労働時間及び業務上通常必要とされる時間を、みなし労働時間としてカウントします。職種や事業場による制限がないため、裁量労働制のように対象業務が制限されていないのが特徴です。

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制とは、「業務の性質上、遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難な19の業種」に限られています。
対象になる業務としては、研究開発やデザイナーなどがあり、対象者が限定的である一方、導入手続きは企画業務型裁量労働制よりもハードルが低めです。
一方、企画業務型裁量労働制は、企業全体に影響を及ぼす事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、対象業務に従事する労働者が対象で、労使委員会による決議が必要です。
裁量労働制は、複雑な導入手順を押さえ、残業代が発生するケースもあることを認識して、トラブルにならないように注意が必要です。

高度プロフェッショナル制度
高度プロフェッショナル制度とは、一定の年収要件を満たす高度な専門知識を持っている労働者を対象に、原則、労働時間に基づいた制限を撤廃する制度です。
高度プロフェッショナル制度は、通常の割増賃金のほか、休日労働や深夜労働に対する割増賃金も支給されないなど、基本的に労働基準法の適用を受けません。裁量労働制よりもさらに適用範囲が狭く、高度な専門的知識等を要する4業務に限定されます。

シフト制・交代勤務制
シフト制や交替勤務制は、曜日や時間帯ごとに勤務する労働者が異なる勤務形態です。
コンビニ店員や病院の看護師などにみられる交替制ですが、労働基準法に定められている制度ではありません。シフト制・交替勤務制は、2交替制もしくは3交替制の2種類が採用されるケースが多いです。
労働者個々の労働時間を抑えることができる一方で、曜日、時期、勤務時間帯によっては、人員の確保が難しくなるケースがあります。

宿直勤務制
宿直勤務制とは、例えば、通常労働者の勤務時間終了後から翌日の業務が開始されるまで、事業所で待機しておくような勤務をいいます。
労働基準法第41条で、監視または断続的労働に従事する者で労働基準監督署長の許可を受けた者については、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されません。
また、宿直については、1日8時間を超える労働や休日労働をさせる場合でも、36協定の締結は必要ありません。宿直手当については、通常勤務労働者の賃金の1/3を下回らない額となります。

管理監督者
管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者をいいます。管理監督者は、労働基準法上の労働時間、休憩、休日の制限を受けない一方、有給休暇については、通常の労働者と同じように適用されます。
しかし、残業代などのコストカットを目的に、単なる役職名だけで「管理監督者」にするのは、当然、労働基準法では認められていません。
管理監督者は、職務内容、責任と職務権限、勤務実態によって判断しなければならず、「名ばかり管理監督者」とならないように注意しなければなりません。

どの勤務形態でも、勤怠管理システムの導入は必須
通常の固定時間制にしても時間外労働の管理は必要であり、変形労働時間制やフレックスタイム制においても制度に応じた労働時間の管理は必要です。
また、異なる勤務形態が併存する事業場などは勤怠管理がより煩雑ですが、勤怠管理システムを導入することで労務管理の負担は激減し、全体としての生産性向上につながります。
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